ロケットの基礎知識

フェアリングとは?

フェアリングはロケットの最先端部に位置し、このフェアリングの中に搭載している衛星などを打ち上げの際の大きな音響や振動、大気中を飛行する際に生じる摩擦熱から護る役割を果たしています。 役目は卵の中身を守る"殻"と同じですが、軽くて丈夫で、かつ振動や熱に強い構造でなくてはいけません。

名古屋市科学館の屋外展示機体

 

 

基礎知識

単純に"殻"の部分を厚く頑丈にするだけだとフェアリングが重くなってロケットの打ち上げ能力が下がってしまいます。 また、ロケットが大気圏外に到達すると、フェアリングはその役目を終えて切り離すことになるため、大きな音響や振動に耐える一方で、指定のタイミングで確実に分離するように設計することが求められます。 H-IIBロケットでは飛行中のロケットに加わる荷重がH-IIAロケットと比べて大幅に増加したことから、フェアリングの開発試験では数々の困難に直面して対策を施してきました。

 

 

フェアリングの「ハニカムサンドイッチ構造」

ハニカム構造(英語:honeycomb structure)というのは、正六角形または正六角柱をすきまなくならべた構造の名前です。 ハニカムとは英語で「ハチの巣」という意味で、多くのハチの巣がこのような形をしていることから名づけられました。
ハチの巣がハニカム構造と呼ばれるこの六角形をしきつめた形で作られているのは、少ない材料で巣の強度を高められることがその理由と考えられています。 もし円形をならべたとすると"すきま"ができてしまい、強度が落ちてしまいますが、正六角形をならべることで"すきま"をあけることなく少ない材料で頑丈な巣を組み立てることができます。 ロケットのフェアリングも、軽量で強度のあるこのハニカム構造を採用してしています。 軽量なアルミを材料にして、ハニカム構造を組み上げ、サンドイッチのようにはさみこんで、最後に表面に白色の断熱塗料を塗装してフェアリングを製作しています。

 

 

打ち上げ後のフェアリングの海上回収

フェアリングはロケット打ち上げ後、充分な高度に到達すると2つに分離し、太平洋上の安全な区域に落下します。 海上に落下したフェアリングから発する信号をもとに、あらかじめ待機している回収船で海上回収に努めています。

フェアリング搭載とロケットへの結合

「こうのとり2号機(HTV2)」をフェアリングに搭載します。

「こうのとり2号機(HTV2)」を搭載したフェアリングを 大型ロケット組立棟(VAB)のH2Bロケット2号機のところまでゆっくり移動します。

H2Bロケット2号機の最上段に慎重に結合して、温度と湿度を一定に保ち、打ち上げの時を待ちます。

フェアリング分離試験の様子

©Japan Aerospace Exploration Agency