COLUMN ~私とH-IIAロケット~

井上 史也
現所属:射場技術開発ユニット

当時のH-IIA担当業務

射場系業務(管制/海外局担当)

最終号機を迎えるH-IIAロケットへのメッセージ

H-IIAでは主に射場系の管制/海外追跡局担当として、打上げに携わりました。これまでを思い返してみて、特に思い出深いと思うことは、管制隊で力を合わせ、コロナ禍における打上げを実現させたことです。
当時はコロナワクチンも出来ておらず、世界各国で出入国も大きく制限されている状況でした。そのようななか、太平洋上の発展途上国にあるH-IIA追跡用海外局において、運用に必要な管制要員に対する渡航許可が、相手国政府からどうしても得られず、H-IIA打上げが出来ない危機的状況に陥りました。このため、わが国の宇宙への玄関口であるH-IIAの打上げを止めてはならないという使命感を胸に、何としても打上げを実施出来ないか、皆で力を合わせ、打開策を懸命に検討しました。
結果として、H3用に開発した追跡用海外局の無人追跡システムをH-IIA用にソフトウェア改修し、海外追跡局開発メーカの運用要員を米国から種子島へ招聘して打上げ運用をするという代替案を立案/実行することで、全ての打上げを計画通りに成し遂げることが出来ました。
これは、我々の使命感や情熱で成し得た結果であるとともに、わが国の政府機関や自治体の皆さまを始め、関係各所の皆さまからの暖かいお力添えをいただいたからこそ、やりきることが出来たと考えています。
コロナ禍を超えて、わが国の宇宙開発は続いていきます。H-IIAのラストフライトが成功し、有終の美を飾ることを祈ります。

H-IIA 43号機打上げ(コロナ禍を超えて)