COLUMN ~私とH-IIAロケット~

長田 弘幸
現所属:(株)コスモテック

当時のH-IIA担当業務

立場と役割(ロケットシステム、JAXA、コスモテック)は、その時々で違いましたが、すべて(1号機~50号機)に関わる事ができ感謝の一言に尽きます。

最終号機を迎えるH-IIAロケットへのメッセージ

204形態の地上設備開発で、機体支持装置(下方退避から上方退避へ)、音響低減設備(ブローダウン注水方式)、の新規開発を行った。 特に、機体支持装置はアイディア出し段階から難航、工場での試験期間中においても度重なる台風の高潮被害、先端金物の離脱欠損不適合に見舞われた。 関係者の知恵と努力で乗り切り、50号機まで滞りなく運用できたことは感無量である。
また、H-IIAロケットの打上げサービス化に向けた課題は、打上げ後補修費用の低減、打上げ間隔の短縮であった。 補修作業の転換(使い捨て方式、噴煙・噴流の侵入防止対策、焼損防止対策、電気系アンビリカルコネクタケーブル類の作業変換)を図るとともに、 同時並行作業実現のための機材の追加整備等を行い、コストの半減と同一MLでの打上げ間隔を当初の約90日から約40日まで短縮することができ、H3の打上げ間隔設定の礎となっている。
打上げ運用では、ML運搬台車の原因不明による不適合に悩まされたこと、オンタイム打上げが極々あたり前のように求められるようになった。 このためML運搬台車の不適合原因を徹底解明し制御回路(搭載基盤)の環境改善(振動、排出ガス)対策を図った。 オンタイム打上げに向けては設備不適合で打上げ延期を回避する策として、機器の部分冗長化と集約化、イプシロンロケットとの共用化設備を整備しバックアップ体制を構築するなど、H3射場設備にも反映されている。
50機の打上げ作業においては、地震、雷、火事も経験、その都度に肝を冷やしましたが、一番、肝を冷やしたのは(確か12号機だったかと)、機体返送時にML運搬台車がVAB2直前で停止、動けなくなった。 その場にいた全員が一瞬凍りついたが、当時のコスモテック若手社員の冷静な判断と対応(手動運転と誘導)で無事VAB内に返送する事ができた。 コスモテク社員の対応は素晴らしかった。これによって、搬送プログラムの更なる改善と検証が進み、その後のH-IIBとH3の機体移動における信頼度が大きく向上したことは言うまでもない。 今では安心して機体移動を見ていられる。