COLUMN ~私とH-IIAロケット~

北 晃治
現所属:MHI 宇宙事業部 技術部 H-IIAプロジェクトリーダー

当時のH-IIA担当業務

技術部 推進設計担当

最終号機を迎えるH-IIAロケットへのメッセージ

私が最も印象に残っているのは、ロケットの第2段機体の推進系設計担当として、H-IIA 高度化開発のエンジン予冷にかかわる新技術開発に携わったことです。
2段機体のLE-5B-2エンジンの特徴の一つに、宇宙空間で停止し、再着火する機能があり、その再着火には、エンジン予冷と言ってターボポンプを規定の温度まで冷やすことが必要となります。(ポンプ高回転時の軸受けの焼き付きや、ガス化により液を吸い込みできない恐れがあるため)
エンジン予冷はタンク内の液体酸素/液体水素を使用しますが、特に比重の大きい液体酸素の消費量を削減することが、打上げ能力向上に直結する為、新たに効率的な予冷が行える「トリクル予冷系統」を開発することとなりました。

極低温(ごくていおん) の液とガスが混じる状況で、かつ宇宙の微小重力下における温度予測は非常に難しく、先輩方のアドバイスを頼りにしながら、様々な文献や実験値を元にモデルを構築し、何度も解析を繰り返して最適な予冷流量、予冷タイミングを求めることに苦労いたしました。
その後、地上でのエンジン燃焼試験での検証、そしてフライト実証まで達成し、想定通りの予冷状況となっていることが確認出来た時は、達成感と共に非常に安堵いたしました。
また、H-IIA高度化開発で獲得したこの技術やノウハウは、H3ロケットにも引き継がれ、活かされています。
思えばH-IIAは先生のような存在で、開発・運用を通じて多くのノウハウを教えてもらい、学び成長することが出来ました。私を成長させてくれたH-IIAに対して、感謝の気持ちでいっぱいです。
ありがとうH-IIA!!有終の美を飾れるように最後まで全力を尽くします!

トリクル予冷系統の説明

エンジン燃焼試験の様子