COLUMN ~私とH-IIAロケット~

長沼 公明
現所属:打上げ輸送サービス射場チーム(MILSET)長
当時のH-IIA担当業務
1段推進系/設備系 開発試験担当
最終号機を迎えるH-IIAロケットへのメッセージ
1996年に三菱重工に入社しました。入社4年目に種子島射場での全段組立試験/燃焼試験(GTV/CFT)に携わって以降、種子島での打上げ/設備保全に関わり続けています。
H-IIA初号機打上げでは1段推進系の作業リーダーを担当し、民営化移行直後にはLCDR(発射管制官)も経験。
その後は打上げ輸送サービス射場チーム(MILSET)の管理職を経て、最終号機ではチーム長という立場で打上げを迎えます。
H-IIAロケットで印象深い出来事の1つは、F14号機でのガスジェット装置推進薬漏洩です。
打上げ3日前(Y-2作業)の推進薬(ヒドラジン)充填中にタンク内からの漏洩が判明しました。
打上げ延期となり、当初は大幅な遅れを覚悟しつつも、皆が一丸となって最短の延期日数で抑える計画を立案し、装置メーカーさんも一緒に昼夜問わずの作業となりました。
例えば、装置の交換に対しては、MHIの工場で、ダンボールでモックアップを作り作業検証し、その検証に携わった人が射場に来てくれました。
また、推進薬排出は、装置設計/製造パートナーとMHIによる合同オペレーションですが、それまで互いが牽制しあう仲だったのが、この合同作業をきっかけに打ち解け、以降の作業では、良い関係性で作業を続けています。
皆が気持ちを1つにして同じ方向に向かっていく際のパワーの大きさを実感するとともに、皆で知恵を出し合って取り組めば解決しないことはない、との思いに至れた出来事でした。
さて、H-IIA最終号機は、既に種子島宇宙センターに到着し、低層棟で静かに出番を待っています。先に打上げたH3、製造中のH3後続号機からの水平展開による追加作業を確実に行う必要があります。
MILSET内には「異常発見、まず止まれ」の指針とあわせ、「計画/段取りを充実し、最後の現場は坦々と」と声掛けしています。万一F14号機のような突然の事態でも、段取りから考え、有終の美を飾れるよう尽力していきます。


出番を待つH-IIA F50号機