COLUMN ~私とH-IIAロケット~

川上 道生
現所属:チーフエンジニア室 輸送系独立評価チーム

当時のH-IIA担当業務

H-IIAプロジェクトチームの一員として試験機1号機の開発、打上げに携わる。その後もロケット機体、設備の双方に関わらせて頂きました。

最終号機を迎えるH-IIAロケットへのメッセージ

6月29日(日)の昼過ぎ、炎天下に、打上げを終えた静かな射点を訪れました。50機すべてではありませんが、ロケットがいなくなった射点へ足を運ぶのが恒例となっています。
この日も、焼けた移動発射台(ML)からは独特の匂いが漂っており、これまでの打上げ後と変わらない様子でした。全体の水洗いは終わったようでしたが、洗浄作業はまだ続いていました。
ただ、いつもと違うのは、このMLがこれで役割を終えて引退するということです。もう使われないのだから洗浄も少し手を抜いてもいいように思いましたが、そうではないようでした。心なしか焼けや損傷がいつもより少ないようにも感じられ「まだまだ現役でやれるんだけど…」とMLが語りかけてくるようでした。MLを見ていてウルっときそうになったのは、今回が初めてです。まさに縁の下の力持ちとして、数多くの打上げを支えてくれました。

射点には、業務中の同僚を誘って二人で行きました。射点エリア内では、単独行動を控えるように──そんなことを教えてくれたのも、H-IIAロケットでした。
H-IIAロケットとその打上げを支える設備から、さまざまなことを学ばせてもらいました。製造・打上げの民間への移管、基幹ロケット高度化プロジェクトマネージャや打上安全監理責任者といった、貴重な経験もさせてもらいました。リスクマネジメント保全という取り組みが始まったきっかけもH-IIAロケットの打上げでした。本当にありがとうございました。そして、言いたくはないですが、さようなら。

宇宙センターを後にする際、近くの社に立ち寄り、50機分のお礼を伝えてきました。これは恒例ではありません。
少しわがままを言って、打上げ後にこの寄稿を書かせていただきました。

50号機打上げ直後の射点