COLUMN ~私とH-IIAロケット~

野尻 昌俊
現所属:チーフエンジニア室 輸送系独立評価チーム
当時のH-IIA担当業務
1986年MHIに入社。H-IIAの2段機体の一般構造の設計を担当。SSB調達のための技術調整を実施。打上げ輸送サービスへの移行とMILSETでの打上げに従事。 現在はH3 、イプシロンSの開発、H-IIAの打上げに JAXA輸送系独立評価チームとして係わっている。
最終号機を迎えるH-IIAロケットへのメッセージ
H-IIロケットは純国産を合言葉に開発されましたが、H-IIAはコストダウンのために海外からの調達にも踏み込みました。 私が担当した2段一般構造では、2段の前方/後方スカートは輸入の鍛造リングからの削り出しに変更しました。 共通隔壁をやめてLH2タンクとLOXタンクをトラスで結合する方式に変更し、トラスをドイツのDornier社で開発しました。 打上げ能力向上のための小型固体ロケットブースタ(SSB)の調達のためアメリカThiokol社との技術調整も行いました。 日中は海外メーカの技術者との調整、夜は日本への報告で寝る間もありませんでしたが、海外の技術者の協力を得ながら開発を完了に導けたことはその後の自信となりました。
打上げ輸送サービスは、MHIとしても自ら衛星顧客と契約し、インタフェースを調整し、自ら打上げるという初めての経験でした。 移行が決まってからは打上執行と打上安全監理の業務分担について調整を繰り返し、今の原型が整いました。 JAXAから技術移転を受けた製品仕様書や関連技術仕様を調達スペックへ落とし込むと共に、パートナ各社とも技術指示や調達計画について調整を行いました。 打上げ輸送サービス化に当たってはJAXAからMHIに出向して指導して頂きました。打上げ輸送サービス移行後も、移行に相応しい状況が保たれていることのJAXAによる確認にも対応しました。 13号機から始まった打上げ輸送サービスが50号機を迎えた今、振り返ると様々なことが懐かしく思い出されます。
MILSETではJAXA安全監理系との調整やMHIの広報/渉外関連のまとめ、地元との調整やイベントへの参加など様々な方々にお世話になりました。 打上げの判断会議を通して感じた手に汗握る緊張感、悩ましい天候判断、打上げ延期や中止の際の迅速な対外対応など様々な経験をしました。
そして今、JAXAで独立宇評価チームとして打上げに係っています。
振り返ると、H-IIAロケットを通じて、開発から打上げまで携わるとこができたことをうれしく思うと共に、ご協力頂いた方々への感謝の気持ちでいっぱいです。 H-IIAで培ったものがH3に引き継がれ、ブラッシュアップされていくことを期待します。