COLUMN ~私とH-IIAロケット~

名和 理
現所属:製造・発射整備部 生産管理担当

当時のH-IIA担当業務

製造・発射整備部 LE-7Aエンジン生産技術担当

最終号機を迎えるH-IIAロケットへのメッセージ

H-IIA開発/運用に携わった中で、私が一番思い入れのある部品はLE-7Aのノズルスカートです。
2000年4月に入社した私が配属されたのは、H-IIAロケットのLE-7A、LE-5Bエンジンの製造工法を設定する生産技術課であり、モノづくりの要となる部署でした。入社当時は、前年のH-Ⅱロケットのエンジントラブルを原因とした失敗を受け、背水の陣に追い込まれたLE-7Aエンジン開発の最終局面であり、当時の事業所の幹部を含め工場全体がLE-7Aエンジンを何としてでも作り上げるという鬼気迫る雰囲気でした。そのような中、私が入社1年目から担当させてもらえたのが “長ノズルスカート” の開発でした。
LE-7Aエンジンは、エンジン開発の課題により、H-IIA初号機から数台は性能がやや低い短ノズル形態でのフライトが計画されていましたが、本来の性能まで向上させることが可能な長ノズルスカートが求められておりました。私は2000年に着手されたその開発の生産技術担当として奮闘することになったのです。長ノズルスカートは、長さ1.8m、直径5~10mmのテーパー状に変化する細い配管を円周上に数百本配列し、配管と配管の間を全箇所ろう付工法で接合する部品です。ろう付以外にも、めっき、熱処理、溶接、機械加工、板金加工、放電加工など、金属加工技術の全てを駆使し、数百にもおよぶ工程により、ようやく完成できる、非常に難しい部品でした。そのため、多くの困難と向き合いながら、愛情込めて作り上げ、自分の手で世の中に生み出した、我が子のような部品です。この長ノズルスカートの開発の中で、製造技術の基礎・応用、仕事の仕方など、モノづくりの大事な部分を学び、今の仕事のスタイルの礎となっています。その長ノズルスカートは、2006(平成18)年1月24日10時33分(日本時間)に、陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)を搭載したH-IIAロケット8号機(H-IIA F8)に取り付けられ、無事に初フライトを飾ることができました。その時の気持ちは、喜びよりも安堵の気持ちが大きかったのを覚えています。
その後は、LE-5Bエンジン部品、機体バルブ部品、HTV部品と担当させて頂く機会に恵まれ、その経験を活かし、LE-9エンジン開発へとバトンを繋げていっております。
私を育ててくれたH-IIAロケットが有終の美を飾れるよう最後まで見守っていきたいと思います。