COLUMN ~私とH-IIAロケット~

堀 秀輔
現所属:経営企画部 推進課 課長

当時のH-IIA担当業務

2000年にNASDAに入社してすぐの仕事がH-IIA初号機に向けたLE-7Aエンジンの開発でした。 2017年から2023年まで約7年間、射点系設備の責任者としてH-IIA/B合わせて計19機(32号機~47号機、7~9号機)を打ち上げました。

最終号機を迎えるH-IIAロケットへのメッセージ

私が種子島にいた2017~2023年は、H2A/Bの終わりとH3への移行という二つの時代の交差点。JAXA・企業・地元の仲間とともに全力で取り組んだ、幕末維新のような激アツの時代でした。 旧い設備の老朽化リスクと新しい機体や設備の初期リスク、双方を抱えていました。
特に、2019年9月のH-IIB 8号機(初回打上げ当日の射点火災)、2020年2月のH-IIA 41号機(初回打上げ当日の配管損傷)では、設備起因で打上げ当日に延期になってしまうという事態が発生しました。41号機の延期直後、数日以内の再打上げを目指し、夜中に射点系全員で設備の再点検を行いましたが、星のとても綺麗な冬の夜だったことを覚えています。

H-IIB F8初回打上げ時の射点火災

H-IIA F41初回打上げ延期直後の真夜中の再点検

その次の号機2020年のH-IIB最終9号機では「二度と設備起因で遅延させない」と、みんなで固く誓って臨みました。 同時に、コロナと戦う社会に感謝の意を表し、カウントダウン中の深夜にブルーライトアップを行ったのち、決意どおりオンタイム打上げを達成しました。

H-IIB F9ブルーライトアップ

H-IIB F9コロナと戦う社会への感謝

これらは単に老朽化設備へ対応したということではなく、「設備起因で打上げを絶対に遅延・失敗させない」という、種子島宇宙センターでロケットに関わる人すべてのプライドをかけた考え方と決意です。 この手法は「リスクマネジメント保全」として体系化し、今後のH3打上げ設備に引き継がれています。決意が風化することのないよう、旧1ロケの代替となる建屋は「リスクマネジメント棟」と名付けられています。
私が最後に打ち上げたH-IIAは、2023年9月の47号機(XRISM、SLIM)です。 これは地球と月の位置関係から打上げ期限までに絶対に打ち上げなければならない中、台風で長期間延期となり、設備不具合での打上げ遅延が絶対に許されないプレッシャーがかかる中での打上げでした。 何が何でも打ち上げると、私自身ブロックハウスに入って対応しました。荒天明けのオンタイム打上げ後、いつも通り一次会で大喜びしたあと、 ジョイフルで偶然会ったSLIM関係者から感謝の言葉をいただいたときの感激は忘れられません。

H-IIA F47打上げ成功後のJAXA設備班

このように思い出の深いH-IIA/Bですが、その巨人の肩の上に乗って、H3をはじめとした日本のロケットが更に発展していくことを願います!