COLUMN ~私とH-IIAロケット~

岡田 修平
現所属:イプシロンロケットプロジェクトチーム
当時のH-IIA担当業務
2011年から種子島宇宙センターにおいてH-IIAロケットの打上げ関連設備の保全・更新業務に従事。大型ロケット組立棟(VAB)やブロックハウス(B/H)、 射点(LP)等にある地上設備(ロケットの点検・カウントダウンに用いる打上制御システム:LCS、テレメータデータ処理を行うタスク支援装置:TAS など)の設備保守・更新、ならびに、打上げ運用等を担当。
最終号機を迎えるH-IIAロケットへのメッセージ
私はJAXAのイプシロンロケットチームで、ロケットのアビオニクス開発や打上げ時の発射指揮者(LCDR)を務める岡田修平です。 日々、新しいロケットの未来を切り開く仕事に携わっていますが、今回は、間もなく退役を迎えるH-IIAロケットについて、胸に残る思い出を振り返りたいと思います。
私のJAXAでのキャリアは、種子島宇宙センターから始まりました。入社後、最初の3年間を種子島で過ごし、H-IIAロケットの打上げを支える地上設備の保全、更新、運用に携わりました。 打上制御システム(LCS)やタスク支援システム(TAS)といった設備は、H-IIAロケットが宇宙へ飛び立つための基盤そのものです。 日々の点検や不具合対応を通じて、H-IIAの打上げがどれほど緻密な準備の上に成り立っているかを肌で感じました。
特に忘れられないのは、入社2年目に経験したH-IIA21号機の打上げです。当時まだ若手だった私は、打上げカウントダウンの実況を任され、緊張で胃が縮こまる思いでした。
カウントダウンシーケンスでは、地上設備とロケットが一つのシステムとして連動し、秒刻みで息づきます。実況の役割を通じて、地上設備からロケット機体までをEnd-to-Endで理解する貴重な機会を得ました。
竹崎総合司令棟(RCC)のコントロールルームで、モニタに映るロケットのテレメトリデータ、地上設備の状況を示す管制画面、射場管制官たちの真剣な声――そして「ゼロ」の瞬間。
ロケットが轟音とともに空へ舞い上がる光景は、地上と宇宙が繋がる奇跡のようでした。
この経験は、地上設備とロケットの密接な関係を深く理解するきっかけとなり、後にイプシロンロケットの開発や発射指揮者としての業務に大いに役立ちました。
H-IIAロケットは、日本の宇宙開発の屋台骨として数多くの衛星を軌道に送り出し、私たちに夢を届けてくれました。種子島での地上設備運用やカウントダウン作業の日々は、私のキャリアの原点です。 最終号機が種子島の空を切り裂くとき、私はH-IIAのこれまでの功績を胸に刻むでしょう。H-IIAの歴史は終わるかもしれませんが、その精神はイプシロンSや新たなロケットに引き継がれていきます。
H-IIAロケット、ありがとう。そして、お疲れさまでした。
あなたの最後の旅を、しっかりと見届けます。

【H-IIA打上げを支えてきた地上設備の一例(打上制御システムなど)】