LE-5B

LE-5Bエンジン概要

「LE-5B」エンジンは、「H-IIロケット」の第2段エンジンである「LE-5A」エンジンの改良型で、「H-Iロケット」の第2段エンジンとして国内で開発された「LE-5」エンジンに順次改良を加え、 信頼性が高いエンジンへと進化したエンジンです。 「LE-5B」エンジンは、「LE-5A」エンジンと同様に軌道上で複数回燃焼させることができる複数回着火機能を持ち、「H-IIA/H-IIBロケット」の第2段に適用されています。 また、現在運用中の「LE-5B-2」エンジンでは、H-IIBコントロールドリエントリ開発や基幹ロケット高度化開発を通じ、 ミッション終了後の第2段機体を制御落下させるための微小推力機能(アイドルモード燃焼機能)や、軌道投入精度の高精度化のためのスロットリング機能が追加されました。

主要諸元

LE-5系エンジンは、ロケットの打ち上げ能力向上に伴い、「LE-5」→「LE-5A」→「LE-5B」に進むにつれ、真空中推力を大きくしてきました。 また、「LE-5」エンジンでは、ターボポンプを副燃焼器(ガスジェネレータ)からの燃焼ガスで駆動するガスジェネレータサイクルを採用していましたが、 「LE-5A」エンジンや「LE-5B」エンジンでは、燃焼器やノズルスカートの壁面を形成する再生冷却部で吸熱した水素ガスの一部でターボポンプ駆動するエキスパンダーブリードサイクルを採用し、 構造を簡素化するとともに、タービン駆動ガス温度を引き下げて信頼性を向上させました。

LE-5系エンジンの概要

主要諸元

LE-5

LE-5A

LE-5B

適用ロケット

H-I

H-II

H-IIA

真空中推力

103kN
(10.5ton)

122kN
(12.4ton)

137kN
(14ton)

混合比

5.5

5

5

真空中比推力

450s

453s

448s

エンジンサイクル

ガスジェネレータサイクル

エキスパンダブリードサイクル

(ノズルエキスパンダ)

(チャンバエキスパンダ)

推進剤

LH2/LOX

膨張比

140

130

110

LH2ターボポンプ
駆動ガス温度

約850K

約600K

約400K

LH2ターボ
ポンプ回転数

51,000
回転/min

52,000
回転/min

52,000
回転/min

LOXターボ
ポンプ回転数

17,000
回転/min

17,000
回転/min

18,000
回転/min

全長

2.7m
回転/min

2.7m
回転/min

2.8m
回転/min

質量

260kg

250kg

290kg

その他の機能

290kg

設計改良

(1) LE-5BからLE-5B-2へ

「H-IIAロケット」3号機の第2段エンジン燃焼中に、それまでの打ち上げと比較して過大な低周波振動が確認されたことから、 2003年3月からこの振動の主要因の一つである燃焼圧力変動の低減を目的として、「LE-5B-2」エンジンの開発に着手しました。 「LE-5B」エンジンからの主要変更箇所は、吸熱後の水素ガスと液水ターボポンプで昇圧された液体水素とを混合するミキサーと噴射器です。 燃焼圧力変動の低減のため、ミキサーは噴射孔の位相を変更し、 噴射器はマニホールドと呼ばれる水素ガス溜りに仕切り板を設けることで液体水素とガス水素の混合促進を図りました。 また噴射器は、燃焼室内にガス水素と液体酸素の噴き出す同軸状の噴射エレメントを小型化し、かつエレメント数を増加させることで、 燃焼室に噴射する液体酸素の微粒化を図りました。これらの改良により、衛星搭載部にかかる振動や燃焼圧力変動を約半分に抑えることが出来ました。 「LE-5B-2」エンジンは、H-IIAロケット14号機以降、またH-IIBロケットにも搭載しています。

(2) LE-5B-2からLE-5B-3へ

「H3ロケット」用の2段エンジンとして、従来の「LE-5B-2」エンジンから、低燃費化・長寿命化を目指した「LE-5B-3」エンジンの開発を行っています。 「LE-5B-3」エンジンの主要変更箇所はミキサーと呼ばれる熱交換によって燃焼室を冷却した後の高温水素ガスとポンプから直接供給される低温の液体水素を混合させる配管と液体水素ターボポンプ(FTP)のタービンです。
「LE-5B-3」エンジンではミキサーの設計を改良し、高温水素ガスと液体水素の混合を改善することで、燃焼室内の燃焼温度むらを抑え、燃焼室の熱交換特性を向上させます。 それにより、ターボポンプを駆動するために必要な水素ガスの量を減らし、低燃費化を図っています。 具体的には比推力と呼ばれる燃費の指標をLE-5B-2の446.6秒から448.0秒へ向上させます。
また、「H3ロケット」では2段エンジンの作動時間がLE-5B-2の534秒から740秒に延長されるため、FTPタービンが高サイクル疲労によって損傷しないように、 「LE-5B-3」エンジンではFTPタービンに作用する圧力や温度の変化を低減するタービン構造に改良することで、高サイクル疲労を抑制し、長寿命化を図っています。
この他にも「LE-5B-3」エンジンでは信頼性向上や低コスト化を目的とした改良を行う計画です。

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