”現場の職人”としての
肌感覚を大切に

鹿児島宇宙センター
射場安全グループ

西田 慧

1. 現在の業務を教えてください

①ロケットを発射するまでの安全を確保するための業務(Safety)と、②ロケット・衛星などの重要な資産を外部の脅威から防護するための陸上・海上・上空の警備警戒業務(Security)を中心として勤務しております。 種子島宇宙センターで射点・衛星系として地上設備の維持・保全・更新を担当しています。また、新たなオペレーションに対する設備の改善、開発対応、衛星ユーザ要望による設備の改善対応にも取り組んでいます。 その他、将来の射場に向けて、保全自動化などの新技術活用に関する研究を行っております。

ロケットを発射するまでの安全を確保するための業務(Safety)

ロケットは大量の推進薬・火薬類を搭載し、取扱を間違えると大きな事故につながります。 推進薬・火薬類が適切に取り扱われ、宇宙センター内でロケットが安全に発射まで組み立てられるよう、関係会社と協力して対応しています。

ロケット・衛星などを外部の脅威から防護するための警備警戒業務(Security)

ロケットの打上げに際しては発射に支障となる侵入者・船舶・航空機を排除しつつ、万が一の事故発生時にも人命に被害が及ばないよう、 発射点を中心に半径約3kmの陸上、南北約20km×東西約40kmの海上、高度約18km迄の上空という非常に広範なエリアについて、様々な手段を用いて警備警戒を行う業務を担当しております。

2. JAXAに転職するに至ったきっかけを教えてください。

前職では一般大学を卒業後、航空自衛隊の地対空ミサイル「ペトリオットシステム」を運用する部隊、「高射隊」において高射運用幹部(現場指揮者のような立場)として勤務していました。 主な仕事はペトリオットシステムの機動・展開・防空戦闘・陣地転換等の訓練の計画作成と指揮監督でした。 あまり気持ちの良い話ではないかもしれませんが、宇宙関連技術は最新の安全保障環境において現場の末端隊員から航空機・船舶にいたるまで必要不可欠なものとなっています。 ここ数年で自衛隊にも宇宙領域の専門部隊が設立されましたが、安全保障と宇宙技術、双方に理解のある人材が不足しているのが我が国の現状です。

そうした状況で、安全保障と宇宙技術の架け橋であるような人材となりたいと思い、JAXAへの転職を決意しました。
...上記のとおり高尚な志もあるのですが、映画アルマゲドンが大好きで、ロケット打上げって浪漫があってカッコいいなと子供のような理由も大きな原動力でした。
自衛隊でのお仕事も大好きだったのですが、テレビ以外で見聞きすることもなく、おそらく日本人のほとんどが生涯訪れることもない種子島でロケット打上げという誇れるお仕事、、、 刺激的かつのんびりした離島ライフを送れそうという非日常に魅力を感じ、倒れるなら前向きに(?)の精神で飛び込みました。

3. 実際に転職してみていかがですか?

私の所属する宇宙輸送技術部門(特に射場安全グループ)は、JAXA内でも比較的現場に近いお仕事が多い部署だと思います。 自衛隊の訓練においても、クレーンでのミサイル(重量物・火薬類)の積み下ろしや高圧電源の取り扱いなど、いわゆる「危険作業」が日常的に潜んでいます。 現場監督者として、それら危険作業に対して十分な安全を確保しつつ、1秒でも早くミサイルを発射できる態勢をとるという訓練を行ってきましたので、 そうした”現場の職人”としての肌感覚は現在の仕事でも活きているなと感じる場面がしばしばあります。自衛隊に限らず、建築土木や工場などで働く方にも通ずる感覚ではないでしょうか。 一見、宇宙と関係のない職域でもJAXAには様々な仕事がありますので、どんな職種の方でも何かしら活かせるスキルがあると思います。 少しでも思い当たる節があれば、ぜひ採用担当にコンタクトをとってみてはと思います。(…もしよければ是非、射場安全グループに!)

また、私の場合は種子島で仕事をしていると家族や親せきが喜んでくれることに一番やりがいを感じます。 打上げロケットの打上げがあるとニュースになりますから、打上げおめでとうと言ってくれたり、周囲に息子がロケットの打上げしてると自慢しちゃったと連絡をもらうと、私も恥ずかしながら嬉しくなります。 H3の打上げではロケット打上げのカウントダウン放送を担当したのですが、義父がBlue-rayに焼いて知り合いに大量配布しておりました。月並みな言葉ですが、きっとたくさんの人に浪漫と感動を与えられる仕事と思います。(特にロケット打上げを行う輸送系業務!) 社として福利厚生が整っておりますし、種子島内の雰囲気ですが、年末年始お盆に限らず仕事さえ片付いていれば自由に休暇は入れられて、子育てにも周囲の理解があるため、その点はとても良い職場環境だと思います。

4. 次にやりたいこと、将来的に成し遂げたいことがあれば教えてください。

真面目なお話をすると、時勢に応じたフレキシブルなセキュリティ体制の在り方を研究・構築したいなと思っています。 また、もともと転職したきっかけにもあるとおり、安全保障と宇宙技術の2柱を軸とするような人材にもなりたいと思っています。 その一方で、JAXAには様々なお仕事があるので、理想と違った道になったとしても、人間万事塞翁が馬、たまたま巡りあったお仕事・人・場所で、予想もしてなかったような面白いことに出会えたら良いですし、 今いる場所を離れるときに、周囲から少しでも私がいてくれてよかったなと思ってもらえるような働きができれば、私は満足だなと思っています。

©Japan Aerospace Exploration Agency