H-IIBロケット

将来の宇宙ミッションへの扉を開く

日本はこれまで、さまざまな研究と実験を重ねながら、独自の技術でロケットを開発してきました。 なかでもH-IIAロケットは、信頼性の高い大型主力ロケットとして、多様な人工衛星・探査機を打ち上げるミッションを支えてきました。 このH-IIAロケットの打ち上げ能力を高め、国際宇宙ステーション(ISS)への物資輸送など、将来のミッションへの可能性を開くロケットが、H-IIBロケットです。 H-IIBロケットの主要な目的は、ISSに宇宙飛行士の生活に必要な物資やISS内の定期交換機器、実験装置・実験用サンプルなどの研究用資材を運ぶ、宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)を打ち上げることです。 H-IIAロケットとH-IIBロケットを併せて運用することにより幅広い打ち上げニーズに対応しています。

4号機から、H-IIBロケットの打ち上げ事業は三菱重工業に移管され、JAXAは打ち上げ安全監理業務(地上安全確保業務、飛行安全確保業務、カウントダウン時の総合指揮業務等)を実施しています。
2020年5月に打上げた、9号機をもって運用を終了しました。

能力向上の要:クラスター化

H-IIBロケットは、H-IIAロケットの技術を活かした、より能力の高いロケットです。 液体酸素と液体水素を推進薬とする2段式ロケットで、本体横にはポリブタジエン系推進薬を使用した固体ロケットブースター(SRB-A)を装着し、加速を補助します。 H-IIAでは1基だった第1段液体ロケット・エンジン(LE-7A)を2基搭載し、標準型で2本だったSRB-Aを4本装備します。

効率的な開発を

H-IIBロケットは、HTVの打ち上げ時には、HTV専用のフェアリングを用いますが、それ以外の搭載機器や地上設備については、 これまで運用実績のあるH-IIAロケットと極力同一の仕様・構成を踏襲し、信頼性の維持・向上と開発リスクおよびコストの低減を図ります。 また、発射設備をH-IIAと共有し、同じ種子島宇宙センター大型ロケット発射場から打ち上げられます。

フライトシーケンス

イベント

経過時間(計画値)

リフトオフ

00分 00秒

SRB-A燃焼停止

01分 54秒

SRB-A第1ペア分離

02分 04秒

SRB-A第2ペア分離

02分 07秒

フェアリング分離

03分 40秒

第1段エンジン燃焼停止

05分 47秒

第1段・第2段分離

05分 54秒

第2段エンジン始動

06分 01秒

第2段エンジン燃焼停止

14分 20秒

HTV技術実証機分離

15分 11秒

ロケットノズル部および耐熱断熱カーテン等の基材

平成8年8月:宇宙開発委員会にて宇宙ステーション補給システム(HTV)及び3トン級静止衛星の打ち上げ能力を持つ試験機(H-IIA増強型)の開発に着手が決定されました。

平成14年6月:総合科学技術会議及び宇宙開発委員会にて、H-IIA標準型以上の能力を持つ輸送系(H-IIA増強型)を開発する場合には、H-IIA標準型を基本に民間に主体性を持たせた官民共同開発を行うことが協議されました。

平成15年4月:開発の進め方として、民間を主体とした開発プロセスを採用すること、また、開発後の役割分担については、H-IIAロケット民間移管後の役割分担に準拠することが決定されました。

平成15年8月: HTVの設計進捗によりHTV軌道への打ち上げ能力要求が当初の15トンから16.5トンと変更されたことを受け、打ち上げサービス事業の競争力強化として民間の要求(静止トランスファー軌道へ8トン程度)を満足する形態のトレードオフを実施しました。宇宙開発委員会の計画・評価部会にて、H-IIA増強型からH-IIAロケット能力向上型への形態変更により開発を進めることの承認を受けました。

平成17年9月:民間の主体性を重視した官民共同開発の枠組みについて、宇宙航空研究開発機構と三菱重工業(株)との間で基本協定を締結しております。

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