「LE-7A」エンジンは、「H-IIロケット」の第1段メインエンジンとして、わが国が独自で開発した「LE-7」エンジンの改良型で、「LE-7」エンジンを踏襲し、 少ない推進薬で効率良く推力を発生することができる燃焼方式である二段燃焼サイクルを採用しています。 この二段燃焼サイクルとは、まず液体水素と液体酸素の一部を予備燃焼させて、そのガスでターボポンプを駆動し、その後残りの液体酸素を加えて再度燃焼させます。 「LE-7A」エンジンは、「LE-7」エンジンに比べて、タービンから主燃焼室にかけての溶接個所を大幅に削減、エンジンコンポーネントの艤装の簡素化、ターボポンプの設計改良等により、 より信頼性を高め、コストを削減しました。 現在運用中のH-IIAロケットの第1段には1台、H-IIBロケットの第1段には2台の「LE-7A」エンジンを搭載しています。
「LE-7A」エンジンは、「H-IIAロケット」7号機迄および10号機に使用した短ノズルエンジンと、「H-IIAロケット」8号機、9号機、11号機以降、および「H-IIBロケット」に使用している長ノズルエンジンがあります。
LE-7系エンジンの概要
主要諸元 |
LE-7 |
LE-7A |
|||
---|---|---|---|---|---|
(短ノズル) |
(長ノズル) |
||||
適用ロケット |
H-II |
H-IIA |
H-IIA/B |
||
真空中推力 |
1,079kN |
1,074kN |
1,098kN |
||
混合比 |
6.0 |
5.9 |
5.9 |
||
エンジンサイクル |
二段燃焼サイクル |
||||
推進剤 |
LH2/LOX |
||||
膨張比 |
約51.6 |
約38.7 |
約46.7 |
||
燃焼圧力 |
12.7MPa |
12.3MPa |
|||
LH2ターボ |
42,200 |
41,900 |
41,900 |
||
LOXターボ |
18,100 |
18,300 |
18,300 |
||
全長 |
3.2m |
3.4m |
3.7m |
||
質量 |
約1.7ton |
約1.7ton |
約1.8ton |
「LE-7A」エンジンの開発初期のコンフィギュレーションは、再生冷却管構造の上部ノズルスカートに、着脱可能な鍛造材からの一体削りだし構造による下部ノズルスカートを装着した形態としていました。
しかしながら、開発途中の地上燃焼試験において、起動停止過渡時にエンジンの横揺れが過大になる不適合や、上部ノズルスカートの再生冷却管の過大熱負荷により破損する不適合が発生したことから、
これらを防ぐため、下部ノズルスカートを外した形態(短ノズル)で完成させました。
これら不適合の調査を進めた結果、原因は、LE-7Aで新しく採用したノズル形状と上下のノズルの接合部の物理的な段差(下部ノズル冷却用フィルムクーリング吹き出し口)にあることが判明しました。
そこでノズルスカートは、段差のある上部/下部分離式のノズル形態をやめて再生冷却管構造の一体型とし、 また「LE-7」エンジンで実績のあるノズル形状に戻すことにしました。
この長ノズルエンジンへの設計変更により、短ノズルエンジンに比べ真空中推力で28kN(2.5ton)、真空中比推力で11秒の性能向上(「H-IIAロケット」としては静止衛星への遷移軌道に投入する能力で、
衛星質量400kg分の性能向上)を達成しています。
LE-7A燃焼試験に関する情報はこちら
©Japan Aerospace Exploration Agency